経済学者 日本の最貧困地域に挑む
鈴木亘
著者の鈴木亘教授は、年金や生活保護など社会保障問題を専門とする経済学者。橋下大阪市長(当時)に年金問題のレクチャーをしたことをきっかけに、2011年3月「西成特区構想担当」大阪市特別顧問に就任した。誰も手を付けられなかった、日本最大のドヤ街「あいりん地区」の地域再生を構想・立案する仕事だ。
以来4年間、多いときには週2~3回大阪に足を運び、「特区構想有識者座談会」座長や、住民参加型の大集会「あいりん地域のまちづくり検討会議」の司会をつとめてきた。
特別顧問就任1年目は、解決すべき問題を列挙し、優先順位を付け、工程表を作成することから始まった。抵抗勢力に「抵抗する隙を与えない」ために驚くべき速さで工程表をまとめていく。2年目は、問題解決にあたるべき主体を「兎に角同じテーブルに着いてもらう」ことを目指し、地域住民、ホームレス支援団体などとの交渉に出かけていった。 彼らが話し合いのテーブルに着いて「あいりん地域のまちづくり検討会議」がスタートしたのが3年目。2014年9月から12月にかけて小学校の体育館を使って、6回の会議が行われた。傍聴席からの怒声が飛び交うなかで鈴木教授が会議をすすめていくさまは、すべてネット上の動画で見ることができる(The Voice of Nishinariホームページ参照)。
2015年1月にはようやく、一連の改革の「象徴」ともいえる、老朽化した「あいりん総合センター」(1970年竣工)の建て替えに道筋がついた。この一連の経緯を「当事者中の当事者」である鈴木亘教授が詳細に描く。あいりん地区には「人口減少、高齢化、貧困」という日本の大問題が凝縮されており、本書を通じて読者は、これらの問題について深く考え、地域が主体となってこれらの問題に取り組むヒントを得ることができる。
著者について
鈴木 亘(スズキ ワタル)
学習院大学教授
1970年生まれ。94年上智大学経済学部卒業、日本銀行入行。98年日本銀行退職、大阪大学大学院経済学研究科入学。2000年大阪大学大学院博士後期課程単位取得退学(2001年博士号取得)。日本経済研究センター研究員、大阪大学助教授、東京学芸大学准教授等を経て、現在、学習院大学経済学部教授。
主な著書に、『生活保護の経済分析』(共著、東京大学出版会、2008年。日経・経済図書文化賞)、『だまされないための年金・医療・介護入門』(東洋経済新報社、2009年。日経BP・BizTech図書賞、政策分析ネットワーク賞・奨励賞)、『社会保障の「不都合な真実」』(日本経済新聞出版社、2010年)、『脱・貧困のまちづくり――「西成特区構想」の挑戦』(編著、明石書店、2013年)、『社会保障亡国論』(講談社現代新書、2014年)等。
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